サスペンション溶射は、粉末材料を水・エタノールなどの溶媒に分散させ皮膜を形成するコーティング法です。他の溶射法と違い、サスペンション(懸濁液)を用いることが大きな特徴。新しい溶射法ですが、注意点がいくつかあるので利用する際はチェックしましょう。
溶射材料にサスペンション(懸濁液)を用います。このため従来の溶射法よりも微細な粉末材料を溶媒に分散させ、緻密な溶射皮膜を形成することができます。
サスペンション溶射は、数ある溶射法の中でも新しい技術になります。原理はプラズマ溶射を応用したものですが、従来では出来なかった微粉末(1μm前後)の材料を、プラズマフレームに投入し溶射皮膜を形成することが可能。
注意点は懸濁液の粘度。一般に粒子径が小さいほど溶射皮膜は緻密になりますが、一方で流動性が低下するため安定した溶射施工が困難になります。安定供給を行なうためには粘度の抑制が必要不可欠。媒体・粒子径・粒子濃度・分散性とのバランスを加味しながら減粘剤の選定・最適化が必要です。
また、懸濁液中の微細な粒子は沈殿・凝集してしまいます。これを抑制し均一に分散させる目的で『ぬれ性(初期分散性)』,『解きほぐし性』,『安定性(再分散性)』を考慮することが必要になります。
溶媒は水やアルコール、エタノール。水は保管・運搬が容易であり、安全性・作業性に優れているといったメリットがあります。デメリットとして、蒸発しにくく冷却作用により溶射フレーム温度が低下しやすいという特徴があります。
アルコールとエタノールは、蒸発しやすく溶射フレーム温度は低下しにくいけれど、危険物として安全性・作業性を考慮した取扱いが必要となります。溶媒と粒子の組み合わせにより、多様なコーティングを施すことが可能です。
コーティングは適した素材と方法を選ぶことにより、皮膜形成の力が変わってきます。これまで通常の溶射で対応できなかった部位でも、サスペンション溶射法を用いることにより、丈夫で耐久性の高い皮膜を作ることができるでしょう。
サスペンション溶射の特徴には以下のようなものがあります。
サスペンション溶射の実施例は見つかりませんでした。
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