部品は使用していくうちに破損していきます。破損には物理的因子によるものと化学的因子によるものがあり、物理的因子のほうが種類が多く致命的。科学的因子は錆・腐食によるもので経年劣化で徐々に進行していきます。
ここでは破損の物理的因子である破壊、変形、摩耗について解説します。
破壊には静的破壊、衝撃破壊、疲労破壊があります。物質が2つ以上に分離してしまうことで、3つとも時間の経過を伴わず、荷重や衝撃により部品が疲弊して破損してしまう現象になります。
他にも荷重の経過により変形して破壊されるクリープ破壊、腐食による遅れ破壊があり、どちらも長い時間がかかる経年劣化によるものになります。
破壊は機械部品の故障として分かりやすく、交換などの対応がしやすい破損の種類です。しかしある日突然起こり、製品全体が稼働しなくなる可能性がある深刻な現象。突然の破壊を防ぐためには、稼働前に部品の表面処理などで強化しておく必要があります。
変形とは、部品が曲がり座屈または伸びを生じることです。破壊は物質が2つ以上に分離してしまいますが、変形は分離しないことが大きな違い。
伸びは、部品に一定以上の荷重がかかる場合に生じる変形。ワイヤーなど特に軟質材では伸びと同時に絞り現象も起こるため、より低荷重でも進行し最終的には静的破壊が起こることもあります。
曲がりや座屈は、薄板、支柱や梁として用いられる角状または棒状のものなどに発生する変形です。一般的な機械構造部品にはほとんど見られませんが、機械装置のカバーなどに用いられることが多くなっています。
変形は部品が分離することはありませんが、製品全体に与える影響は破壊と同じく深刻なものになります。
摩耗は、固体または液体である相手材と接触することにより起こる現象です。固体同士の接触には摩擦(すべり)、転動(ころがり)、打撃、振動などがあり、種々の摩耗現象を生じます。
液体の場合は、液体そのものによる場合と液体中に混在する固体粒子による摩耗があり、両方とも腐食摩耗が生じます。
個体も液体も摩擦が起こることにより、破壊や変形を起こしてしまうことがあります。そのためあらかじめ摩擦が起こりそうな部品に対して、何らかの処理を施しておくことが必要です。
機械部品を長寿命化させるためには、材料の表面処理をして強度をアップする方法があります。表面処理を行うことによって、表面には新たな特性が追加され破損に強い高性能な材質に変わります。
表面処理には多くの種類がありますが、物理的にも科学的にも強い効果を発揮する方法は表面熱処理・溶融・溶射の3つです。
表面焼き入れ、クラッディング、ガス式・電気式溶射などが主な方法で、耐摩耗性、耐疲労性、耐熱性、耐食性に効果的。
部品の材質や使用環境によって適する表面処理を選ぶことにより、製品の長寿命化が実現し、ライフサイクルコストを削減するでしょう。さらに省資源化や、環境にやさしいものづくりに繋がるといえます。