耐衝撃性とは、外部から加えられた衝撃に対して、物質がどれだけ耐えられるかという耐久性のこと。耐衝撃性と硬度は反比例の関係にあるとされており、例えば金属であれば柔らかい素材ほど衝撃に強く、硬い金属ほど衝撃に弱いということになります。例えば、紙製造や印刷に使用される機械(主にロール面)において、耐衝撃密着性などの向上が求められています。
その対策として、溶射による耐衝撃皮膜の付与が有効な選択肢のひとつとして考えられます。耐衝撃皮膜とは、物体が衝突を何度も繰り返したり、力が集中する部分の耐衝撃性を高める皮膜のこと。耐衝撃皮膜を施すことで機材の強度がアップし、衝撃による破壊を防ぐ効果が期待できます。
表面処理によく使われる金属系やセラミック系のコーティング方法は、衝撃に対する強度が比較的低いという特徴があります。強い衝撃が想定されるのであれば、耐衝撃性に優れた溶射材料・コーティング方法選ぶ必要があります。 耐衝撃性が高い表面処理素材として挙げられるのは、ゴム素材・ウレタン素材、セラミックと金属を複合させたサーメット溶射材などがあります。
硬度だけでなく、潤滑性・耐摩耗性といったその他の性能を求める場合でも、耐衝撃性は考慮すべきポイントです。溶射材料の選定はもちろん、基材の性質なども踏まえて適した方法を選ぶことが重要と言えるでしょう。
高速フレーム溶射とは、溶射ガン内でガスを燃焼させ、高温になった燃焼炎ジェット流の中に粉末溶射材料を供給。粉末溶射材料を溶融または半溶融状とし、音速を超えるスピードで連続噴射する溶射方法です。基材に対して高速で粒子が衝突するため、皮膜は緻密で密着度も高いのが特徴。WC-Cr3C2-Nなどのサーメット溶射材を使用することで、耐衝撃性はもちろん耐摩耗性・耐食性を付与することもできます。
ガス燃料と酸素ガスによる燃焼フレーム内に溶射材料を供給し、溶融した材料を圧縮空気で吹き飛ばすことで皮膜を形成する方法。金属はもちろん、非金属や紙(条件あり)にも溶射できるのが特徴です。耐衝撃性を付与できる溶射材料として挙げられるのは、SFNi1(メテコ12C等)Ni基自溶合金1種。耐衝撃だけでなく、耐食や耐熱性にも優れています。また、セラミック溶射材料であるグレーアルミナも耐衝撃性・耐摩耗性が高く、各種機械部品などに用いられています。
PEEKとは、ポリエーテルエーテルケトンという樹脂のこと。約200℃ という高温に耐える性質を持っており、さらに耐薬品性にも優れていることから、多様なジャンルで用いられているスーパーエンジニアリングプラスチックです。外部からの衝撃に耐える耐衝撃性、物質が劣化して壊れることに耐える粘り強さを指す靭性(じんせい)も備わっています。
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