撥水性とは、水をはじく性質のことを指します。物質の撥水性を評価する方法にはいくつか種類がありますが、接触角で評価するのが一般的。物質の表面に水を載せたとき、その接触角が90度以上であれば撥水性があるとされます。ちなみに、接触角が110~150度の場合は高撥水性、それ以上を超撥水と呼びます。
電子デバイス部品の防水防湿ほか、光学分野におけるレンズ・ガラス等の防曇防滴を実現するために、有効な選択肢のひとつとなるのが、「溶射加工」による高撥水性の皮膜形成です。さらに今後は、高撥水性に加えて高光透過性・絶縁性・耐薬品性・柔軟性といったさまざまな性質を組み合わせることにより、ウェアラブル端末の高性能化といった技術への応用も期待されています。
北見工業大学と美瑛白土工業との共同研究です。この研究では、超撥水性を示すフッ素化カーボンと抗菌性を示す塩基性塩化銅を添加した複合皮膜をガスフレーム溶射によって形成。液滴法によって撥水性を調べたところ、接触角の最大値は141度、最小値は107度、平均値は131度という結果となり、優れた撥水性を示すことが分かりました。
セラミックコーティングとは、金属材料などの表面にセラミック皮膜を形成する技術。基材をさまざまな負荷から守ったり、新たな機能を持たせることも可能です。撥水性や耐薬品性といった特性はフッ素樹脂と同等ですが、耐熱性・熱伝導性についてはセラミックコーティングのほうが優れています。
株式会社吉田SKTが提供するナノプロセスは、ナノレベルから1μmのほどの超薄膜をコーティングできる技術。撥水性はもちろん、撥油性・非粘着性・液滑落性などを付与することができます。加工による寸法変化が起こらないため、レンズなどの光学特性を維持することも可能。これまで表面処理ができなかった電子機器・電子部品はもちろん、軸受け部品のオイル拡散防止、シール部品のオイルスラッジ防止などにも利用できます。
撥水性を高める表面処理材として有名なのはフッ素樹脂です。フッ素は安定したC-F結合を持つ物質であるため、分子間力が弱く、表面張力も低くなります。そのため、対水接触角が114度と大きくなり、水を弾きやすくなるのです。金属・プラスチックの表面にも施工することができ、摩擦や酸などにも強いのが特徴です。アーク溶射をコーティング前の処理として施工することにより、フッ素樹脂コーティングの耐摩耗性をアップさせることも可能となっています。
トーカロ株式会社が提供している有機系防汚コーティングは、F分散型有機系化合物・Si系有機化合物を用いたコーティング技術。このコーティングにより、F分散型有機系化合物の場合は水との接触角が110~115度、Si系有機化合物の場合は100~110度の撥水性を付与することができます。水はもちろん血液をはじく特性もあるため、理化学機器・医療機器への汚れの付着を軽減できます。
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