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硬度

鉄鋼構造物などの硬度を高めるための技術とは

一般的に、セラミックに比べると金属は硬度が低くなります。しかし、硬度が必要な基材であってもセラミックでは製作できないものであったり、コストもの問題で採用できないケースもあるでしょう。また、熱処理などを加える場合、変形や寸法変化といったリスクもあります。

そこで効果を発揮するのが、溶射加工です。セラミックで製作できない機材であっても、表面に硬度の高い材料(セラミック、サーメットなど)を吹き付ける溶射であれば加工が可能。もともとの基材がもつ硬度を高めることで、耐久性・耐摩耗性も確保することができるのです。

もちろん、部分的な溶射加工も可能です。「ある部分だけすり減って困っている」「すり減った部分だけ硬くしたい」といったニーズにも対応。すり減ったからといってすべての基材を交換する必要がないため、コストを抑えることができます。ちなみに、基材は金属・非金属を問いません。アルミ・鋼・ステンレス・アルミ・銅・ガラス・木材など、さまざまなものに加工できるのが特徴です。

鉄鋼構造物などの硬度を高めるための溶射の特徴

一般的な金属よりも硬度の高い溶射材料を、基材に吹き付けられるのが溶射の特徴。硬度アップに用いられる溶射材料はセラミックが中心ですが、さらに高度の高いタングステンカーバイド系を使用することもできます。

高速フレーム溶射(HVOF)

高速フレーム溶射(HVOF)とは、溶射ガン(溶射銃)の燃焼エネルギー圧を高めることで高速火炎を発生させ、溶射材料を溶融または半溶融状態とし、高速で基材に激突させる溶射方法。非常に密着力が高く、緻密な皮膜を形成できるのが特徴です。HV1000以上の高硬度皮膜を作ることができるだけでなく、耐摩耗性・耐食性にも優れています。硬度アップで用いられる溶射材料は、サーメット溶射材料のタングステン系が中心です。

自溶合金溶射

自溶合金溶射材料を溶融して基材に吹き付け、ヒュージングと呼ばれる作業で皮膜を再溶融させることにより、高い密着力を実現します。自溶合金溶射による皮膜は、酸化物が少なく無気孔であることが特徴。表面の硬化はもちろん、耐高温摩耗・耐食性にも優れています。ボイラー部品などの耐熱用途部品、スクリューや粉砕刃といった耐摩耗用途部品の加工に採用されることが多くなっています。

アモルファス合金溶射

アモルファスとは、原子・分子が不規則に集まった非晶質構造の物質です。結晶質組織の場合、結晶粒の中に転位・結晶粒界と呼ばれる欠陥があり、これが強度の低下や腐食の原因となります。しかし、アモルファスにはこういった欠陥がないため、物質の強度や耐食性が向上するのです。ちなみに、アモルファスの表面硬度はビッカース硬さでHV1000以上となっています。

硬度の高い溶射材料

溶射加工でもっとも高い硬度を作れる材料は、溶射用タングステンカーバイドコバルト(WC/12Co)。高速フレーム溶射(HVOF)が用いられます。同等の硬度を持つのが酸化クロムで、こちらはHV1286.2。プラズマ溶射が用いられます。その他にも、モリブデン系やチタン系の金属合金、アルミナ系・ジルコニア系のセラミック系溶射材料などが用いられています。仕上がりや特性なども考慮しつつ、適した材料を選ぶようにしましょう。

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※1参照元:デジタルリサーチ「2013年版溶射市場の現状と展望」(2021年12月調査時点)
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