耐薬品性
化学機器装置などの耐薬品性を高める技術とは
耐薬品性とは、さまざまな薬品に対する耐久性のこと。金属材料などが、酸・アルカリ・有機溶剤・酸化剤・塩類といった薬品に接したとき、化学反応によって溶解・浸食・膨張・減耗といったダメージを受けにくいことを指します。
各種産業や研究などの現場では、設備機器や化学機器装置などが薬品にさらされるケースもあり、そのままだと設備機器や装置にダメージが蓄積して寿命が短くなってしまいます。そこで、耐薬品性の高い溶射材料で表面をコーティングすることにより、薬品への耐性向上が期待できるようになります。
化学機器装置などの耐薬品性を高めるための材料
耐薬品性向上を目的に用いられる溶射材料は、アルミナ・クロミア・チタニアといったセラミック系。または、クロムカーバイトニッケルクロム系といった超硬系の材料が選択されます。主に用いられる溶射方法は、プラズマ溶射です。
主なセラミックの耐薬品性
硬度や耐摩耗性に優れていることで知られるセラミックは、耐薬品性にも優れるという特徴も持っています。以下に、各セラミックの耐薬品性についてまとめてみました。
- クロミア(酸化クロム)
クロミアの溶射被膜は緻密で硬度が高く、酸・アルカリにも強いのが特徴です。200℃
以下という条件下で、耐化学薬品性皮膜として使用されます。
- チタニア(二酸化チタン)
融点が比較的低い(1843℃
)素材で、良好な溶融・緻密な皮膜形成を得られるのが特徴。熱濃硫酸・アルカリ以外の酸には溶けないという性質があります。
- ホワイトアルミナ
耐摩耗性・絶縁性に優れている白色のセラミック。優れた耐酸化性を持ち、酸などの薬品に強い、溶融金属との反応性が少ないという特性を持ちます。
- アルミナ・チタニア
アルミナにチタニアを合わせたセラミック。使用環境は540℃
以下となっており、その環境下であれば耐薬品性の付与が可能です。
- ジルコニア
安定化剤としてCaO6~7%、MgO~25%、Y2O3~20%を添加し、固有させる材料。耐熱性・耐衝撃性・耐薬品性を持つのが特徴です。
化学機器装置などの耐薬品性を高めるための溶射の種類
耐薬品性を高めるのに溶射加工は有効ですが、溶射被膜には気孔が存在します。完全に環境遮断をするのは難しいため、対象となる基材や溶射材料への配慮が大切です。
セラミック溶射
溶射材料の中でも、優れた耐薬品性を持つセラミック。基材表面にセラミックを溶融状態で吹き付ける皮膜を形成することにより、耐薬品性を付与できます。アルミナ・ジルコニア・チタニアといった、酸化物セラミックが用いられることが多くなっています。
プラスチック溶射
プラスチック溶射とは、ポリエチレン・ナイロン・エポキシといった樹脂を溶融して吹き付ける方法。耐水性・耐海水性・耐薬品性を持つ、樹脂皮膜を基材表面に形成することができます。皮膜に気孔がないのが特徴で、数百μm~数mmの厚さまで施工が可能。プラスチック溶射材料にはさまざまな種類がありますが、とくにアルカリに強いのはナイロン11、酸に強いのはポリエチレンとなっています。
PEEKコーティング
PEEKとは、ポリエーテル・エーテル・ケトンからなるプラスチック溶射に用いられる樹脂のひとつ。エンジニアリングプラスチック材料よりも高い性能を誇るのが特徴で、スーパーエンジニアリングプラスチックと呼ばれています。有機化合物であるケトンが含まれているため、耐薬品性および耐熱性に優れているのが特徴。酸・アルカリを含む薬品への耐性が高く、高温下でより高い性能を示すという性質があります。
フッ素樹脂コーティング
フッ素樹脂コーティングは、すべり性・耐薬品性・撥水性・絶縁性・非粘着性に優れた表面処理方法。ほとんどの化学薬品・溶剤に対して高い安定性を持っており、強酸・強アルカリに接触しても不純物が発生しにくいのが特徴です。半導体製造装置・薬液容器・チューブ・配管などに多く用いられています。
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※1参照元:デジタルリサーチ「2013年版溶射市場の現状と展望」(2021年12月調査時点)
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