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溶射とは?めっき・溶接との違い

ここでは、「溶射」「クロムメッキ」「ニッケルメッキ」「溶接」についてそれぞれの特徴とメリット・デメリット、溶射との比較についてまとめていますので、参考にしてみてください。

溶射とは?

溶射とは、さまざまな熱源を用いることによって溶かしたり溶融に近い状態にした材料を、加工する物質に吹き付けて薄い膜を作る加工技術です。この時に使用される材料は、金属やセラミックス、サーメットなど非常に多彩である点が特徴となっていますが、吹き付けられた溶解粒子はすぐに冷却されて皮膜を形成します。

溶射は金属やセラミックス、プラスチックなど幅広い基材に対し、耐食性や耐摩耗性などを向上させたり、電気特性を持たせるなどさまざまな目的で行われています。また、基材の必要とする範囲にのみ溶射処理を行うこともできるといった点も特徴のひとつとなっています。

めっきとは?

めっきとは、金属や非金属の表面に対して金属の薄い膜をつける表面加工のことをいいます。主に外観や耐食性などの向上に加え、場合によっては電気伝導性などの機能の付与を目的として行われます。この時に使用される金属は銅やニッケル、クロム、金などさまざまな種類がありますが、ここでは多彩なメッキの中から、クロムメッキとニッケルメッキの2種類について解説をしていきます。

クロムメッキ

クロムメッキは、その名の通り「クロム(Cr)」を用いためっき加工です。色は光沢のある銀白色であり、非常に硬く頑丈であるという特徴があります。さらに、耐食性や耐変色性にも優れている点も特徴となっていることから、クロムメッキを行うことによって、さびにくく変色しにくい、また衝撃にも強い製品とすることができるという点がメリットといえるでしょう。

さらに、見た目が美しく仕上がるという点も、クロムメッキの特徴のひとつです。

ニッケルメッキ

ニッケルメッキは、「ニッケル(Ni)」の成分を用いためっき加工のことです。色は黄白色であり、変色しにくく耐食性に優れている点が特徴。そのため、加工を施すことによって美しい外観と高い耐食性を持たせることができる点がメリットといえるでしょう。

さらに、より高い耐食性を得たいと考える場合には、ダブルニッケルメッキや無電解ニッケルメッキなどを行う方法もあります。特に無電解ニッケルメッキを行う場合には、熱処理を行うことによってさらに高い硬度が得られるという点も特徴といえます。

溶射とめっきの違い

溶射 クロムメッキ ニッケルメッキ
特徴 固体原料を溶融し、投射することにより表面加工を行う クロム金属を析出させるメッキ
装飾クロムメッキと硬質クロムメッキがある
ニッケルの成分を用いたメッキ
電解ニッケルメッキと無電解ニッケルメッキがある
メリット 基材材質の選択範囲が広い
溶射材料の選択肢が広い
基材の温度が低いまま処理可能
耐食性・耐熱性などに優れる
美しい外観に仕上がる
耐食性・耐熱性などに優れる
黄白色の美しい外観を実現できる
変色しにくい
デメリット 厚膜が難しい
大量生産に向かない
電流効率が悪くつき周りが悪い
加工には高度な技術が必要
電気が届かない部分は皮膜がつきにくい
均一性に乏しい

「溶射」とは、溶射材料(金属やセラミック、サーメットなど)を融解・軟化させてから加工する物質に吹き付け、皮膜を形成する表面処理技術です。それに対して、「めっき」とは、加工する物質に薄い金属膜を被せる表面加工です。

対象となる物質に薄い膜をつけるという点では溶射とめっきは似ていますが、つけられる皮膜の種類が大きく異なっています。具体的には、溶射は金属のほか、樹脂やプラスチックといった皮膜をつけることも可能ですが、めっきの場合は金属の皮膜のみ対応が可能といった違いがあります。

また、溶射は部分的な加工も得意としているものの、めっきの場合は部分的な加工は不得意であるといった点も大きな違いといえるでしょう。ただ、試作から量産におけるコストを比較すると、めっきの方が低コストとなっています。

溶接とは?

「溶接」とは、金属の接合を目的とした加工方法のひとつです。この加工方法は、金属部品や機械だけにとどまらず、非常に幅広い分野で使われている点が特徴となっています。

接合を行う際には、接合したい金属部分に熱や圧力を加えます。すると接合部分が溶けますが、その後冷却されて固体の状態に戻った時に接合される、といった流れになります。この過程の中では接合部分が溶けて混ざり合うことから、その部分の金属同士が分子的に結びつくことができ、強力に接合される点が大きなメリットといえるでしょう。

ただし、接合する場合には熱を加える必要があることから、この熱によって基材のひずみなどが発生する可能性があるという点がデメリットといえます。

溶射と溶接の違い

溶射 溶接
特徴 固体原料を溶融し、投射することにより表面加工を行う 基材と部品を直接熱によって接合する
メリット 基材材質の選択範囲が広い
溶射材料の選択肢が広い
基材の温度が低いまま処理可能
厚みをつけられる
接合のための機械・装置が大掛かりにならない
デメリット 厚膜が難しい
大量生産に向かない
基材に熱を加えるため変形などの可能性がある

溶接技術には「溶射」と「溶接」の2種類があります。この2種類にはそれぞれ異なる点があります。

例えば、「基材に熱を加えるか」という点が大きな違いとして挙げられます。溶射の場合には、材料を溶融に近い状態にして基材に吹き付けることによって成膜を行うため、基材に熱を加えずに加工を行えることに加え、皮膜が必要な範囲のみに溶射を行えます。それに対して溶接の場合にはおよそ500度以上の高温にする点が特徴。そのため、基材によっては損傷や変形が発生するケースもあります。

また、それぞれ「仕上がりの厚さ」についても異なってきます。溶射の場合には仕上がりが最高でも数ミリの厚さとなりますが、溶接の場合には数十ミリまで厚みをつけられます。これは、溶接は溶接金属を積層していく技術であるためです。仕上がりに厚みを持たせられるため、溶接は溶射と比較すると耐摩耗性や耐食性、耐熱性を向上させられるというメリットがあります。

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※1参照元:デジタルリサーチ「2013年版溶射市場の現状と展望」(2021年12月調査時点)
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