生産現場において、部品等の潤滑性(すべり性)を高めることは「生産スピードアップ」「摺動摩耗を低減させることによる生産精度の向上」「設備の耐久度アップ」といった点で効果的です。潤滑性が低いと、あちこちの摩擦が大きくなってメンテナンスコストが上昇したり、コンベアガイド等の干渉で製造の流れがスムーズにいかなくなることがあります。
一般的に、潤滑性を高めるには油などの潤滑剤を使用しますが、なかには潤滑剤が使用できないケースもあるでしょう。そんな環境下での潤滑性向上に、コーティング技術である「溶射加工」が有効な選択肢のひとつになります。溶射であれば、潤滑剤を使用できない場所や部品の表面に対し、直接潤滑性の高い素材を吹き付けることが可能。同時に耐摩耗性を高めることもできるため、メンテナンスにかかる時間・コストの軽減が期待できます。
溶射加工で潤滑性を高めるには、目的に合わせた表面処理(コーティング)が必要です。よく用いられる素材にフッ素樹脂コーティングやセラミックコーティングなどがありますが、使用する環境や素材にも留意して選ぶことが大事。常温で潤滑性が確保できていたとしても、室温や外気温の上昇で徐々にすべりにくくなる…といったケースもあります。また、湿度の有無・接触の角度・搬送スピードによっても潤滑性に違いが出てくるため、慎重に溶射方法・表面処理方法を選びましょう。
セラミック溶射とは、減圧プラズマ溶射・大気プラズマ溶射・高速フレーム溶射・溶棒式フレーム溶射といった溶射方法と、アルミナ・イットリア・ジルコニア・チタニア・クロミア(酸化クロム)などの溶射材料を組み合わせた方法。さまざまな溶射材料の中でも、とくに潤滑性に優れているのはクロミアです。
アーク溶射とは、2本の溶射材料を溶射ガン(溶射銃)の先端でアーク放電させ、溶融した溶射材料を圧縮エアージェットで吹き付ける方法。潤滑性に優れた物質である、フッ素樹脂をコーティングするのに用いられます。使用できる基材は、金属・セラミック・ガラスなど。常温成膜・低温焼成タイプであれば、プラスチックやゴムといった基材への表面処理も可能です。
酸素・アセチレン(プロパン)の燃焼フレームの中に自溶合金の粉末溶射材料を送り込み、溶融噴射する表面処理方法です。溶射後にフュージング処理(再溶融処理)を行うことで無気孔に近い皮膜となり、非常に緻密な皮膜を作ることが可能です。潤滑性はもちろん、耐摩耗性・耐食性にも優れた溶射方法となります。
DLCコーティング(ダイヤモンドライクカーボンコーティング)とは、金属の表面にナノレベルの薄膜を形成できる表面加工。摩擦係数がμ=0.1と圧倒的に低く、さらに耐摩耗性・耐擬着性にも優れているのが特徴です。その他にも、生体親和性・赤外線透過性・ガスバリア性・耐食性・デザイン性等を高めるためにも使用されています。
ブラストロンコーティングとは、素材のメッキ面に金属・砂・セラミックなどの微粒子を高速で打ち付ける表面処理方法。ブラストロンコーティングを施すと表面が凸凹の泡状となり、対象物との接触面積が少なくなるため、非常に高い潤滑性(すべり性)が実現します。
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