機材や道具の寿命に大きく関わる、錆の発生。この錆の発生を防ぐために用いられる溶射加工にはどのような種類があるのか、具体的な事例と共にご紹介していきます。
橋梁、鉄塔、歩道橋、ウォーターフロントといった鉄鋼構造物は、公共投資の抑制や老朽化対応といった観点から、長寿命化、維持管理費用の低減が求められています。そのような背景から、大面積への施工に対応し、現地施工が可能な「溶射加工」が注目されています。
防錆を目的に溶射加工を行う場合、主に亜鉛・アルミニウム、亜鉛・アルミニウム合金が用いられています。ただし溶射被膜には気孔が存在するため、これを封鎖しないと高い防錆効果は期待できません。そのため、溶射加工後に気孔を埋める封孔処理を施し、錆の発生を防ぎます。防錆溶射による皮膜の厚さは数mm~数10μまで自由に調整でき、熱による基材の歪みなども少ないのが特徴。橋や鉄塔といった大型の建造物にも施工できます。
防錆・防食溶射としては、主にアーク溶射やフレーム溶射が用いられています。
低電圧低温アーク溶射工法では、高い防錆力を持つ亜鉛・アルミ擬合金溶射被膜を形成。新品同様の防錆力を復活させられる方法です。施工に使用する低電圧低温アーク溶射機は、溶射皮膜温度が40~70℃と低温であることが特徴。そのため、高温で基材が歪むといったトラブルがかなり少なくなっています。また、緻密な粒子で密着度が高く、仕上げ塗装をプラスすれば耐候性もアップ。取替や改修周期を、数十年単位で伸ばすことも可能です。
常温金属溶射とは、アーク溶射の技術を改良した方法。金属溶射に欠かせないブラスト処理が不必要となっており、その代わりに塗付型粗面形成材を塗布します。
これまで防錆を目的とした金属溶射では、亜鉛・アルミニウム・亜鉛/アルミニウム合金のどれか1種類を使用していましたが、常温金属溶射であれば亜鉛とアルミニウムを体積比1:1、質量比72:28の割合で吹き付けることが可能。これにより、溶融した亜鉛とアルミニウムの微粒子が交互に重なり合った擬合金(複合金属溶射皮膜)を形成することができます。この皮膜に、気孔をふさぐ封孔処理を施すことで、長期間にわたる防錆を実現できるのです。
この常温金属溶射は20~50℃という常温下での施工となるため、高温による基材の歪みや寸法の狂いといったトラブルはほとんどありません。また、常温金属溶射装置が小型軽量化されたことにより、現場で直接施工できることもあります。
酸素ガスと燃料で満たされた燃焼フレームの中に溶射材料を供給し、溶融した材料を圧縮空気などで吹き飛ばして皮膜を形成する方法です。このフレーム溶射で用いられる防錆目的の材料は、亜鉛・アルミニウム・亜鉛/アルミニウム合金。使用環境が酸性の場合はアルミニウム、アルカリ性の場合は亜鉛を用いるなど、環境に合わせて材料を選ぶことが大切です。
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